ブックオフで見つけた本。「東四丁目」(ジェローム・ワイドマン著)。
1920年代のニューヨークを舞台に健気に、たくましく生きる少年と家族の物語、と帯にある。
主人公の少年はロウアーマンハッタンの東四丁目、アベニューA,B,C,Dエリアで暮らす。
少年は、1800年代に祖父がオーストリアまたはポーランドから移民したユダヤ人。気丈な母のもと貧しくも信仰深く愛情豊かに育つ。いつか成功して両親に楽をさせたいと勉強し、ボーイスカウトに励み、お小遣い稼ぎにアルバイトもしている少年だ。その生活の中で出会った人々や、出来事を短編でつづり、一冊の本としている。
11年前の今頃、東3丁目の大学寮で2ヶ月滞在した時、ブラブラ歩いた町を思いながら読んでいった。
アベニューAにあるアパートで課題の映画の撮影をしたことがあった。鉄のハシゴのついたアパートで、すごくニューヨークらしい情緒があったが、炊事道具や食べ物が置いてないので住んでいた人に聞いたら、ネズミさんが出るからとのこと。 うーーん、それはまずい。情緒のある部屋でもネズミさんとは会いたくない。幸い撮影中はあわなかった。
撮影中はアベニューAを往復してアパートと大学寮を通った。旅行本などに書かれてある「危ない」エリアというのは少し言いすぎのようだ。ただ、真夜中は知らない。運が良かっただけかもしれないが、夜の10時ごろも歩いたが、明るく人通りもあり、普通の通りのように思えた。
本は、どの話もいいというか、心に響くものであったが、中でもボーイスカウトの話や、大恐慌のときの会計事務所でのアルバイトの話はとても印象が深かった。ジェローム・ワイドマンはミュージカル「フィオレロ」でピュリッツアー賞を受賞したそうである。どんなミュージカルか調べてみたくなった。
この本は常盤新平氏訳とあるが、氏が行っている翻訳の勉強会のみんなで訳し、氏が仕上げたとある。こういう本が読めるのもニューヨークを愛してやまない氏のおかげであると思った。